
障がい者雇用の取り組みについて
当社では、障がいのある方に就労機会を提供し、安心して働き続けられる職場環境の体制を確立することを目指し、2008年から障がい者雇用に取り組んでいます。現在、全社で三十名以上の障がいを持った方が活躍しており、東京本社では身体、精神、知的等さまざまな障がいをもった十数名のメンバーが障がい者雇用専門部署に在籍しています。
この専門部署では健常者・障がい者を問わず楽しくやりがいを持って長く働ける環境づくりを大切にしています。そして社内での障がいに対する知識や理解を深め、協力して働ける職場作りに日々尽力しています。ここでは、その取り組みの一端をご紹介します。
目次
一緒に働く上で配慮していること
はじめは簡単なことから
最初はできないことでも、簡単な作業から始めて段階を踏み、多少時間がかかってもメンバー自身が行えるようになる事で達成感を味わえるような業務の進め方をしています。
もちろん本人がどうしてもできない場合は、担当社員が代わりに作業したり、他のメンバーにサポートを依頼します。しかしやるべきことは極力メンバー自身で行うことで、やりがいにつなげています。
配慮と個々の対応
基本的には障がいを持った方に対しても健常者と同じように接していますが、障がいに対しては可能な限り配慮しています。
障がい特性上の傾向はあるものの、個人ごとの具体的な得手不得手をしっかりと見定めています。業務全体の中でその方が出来る部分はどこか、どんなツールがあれば一人で行えるのか、一回に依頼する分量はどれくらいか、どこまで作業を一緒に行いどの時点でお任せするのか、といった判断項目を設け、一人一人に合わせた対応を行っています。
問題なく進められると思っていた作業においても後から適正に気付くこともあるため、その場合は予定を変更するなど柔軟な対応を心がけています。
業務スピードやミスに対するプレッシャー抑止
業務スケジュールを立てる際は、期限に余裕をもてるように人員や手順を調整しています。またミスを防ぐため、可能な業務においてはダブルチェックの体制をとっています。自分が行った作業を他のメンバーがチェックすることで、ミスの抑止だけでなく、孤立した作業にしないという狙いもあります。
体調の確認
朝、出社時にメンバーのメンタルが落ち込んでいるような場合や顔色がすぐれない場合はすぐに声をかけ、面談して話を聞くようにしています。また口頭で申告しにくい場合は日報を通じて体調不良その他を申告して頂けるようにもしています。状況によって業務量、また勤務時間の調整等を行います。
働きやすい環境づくり
休憩時間の分割
昼休憩は通常60分間ですが、午後に働く時間の方が長いため、希望者には、昼に45分間、午後3時頃に15分間、と分割して休憩を取ることができるようにしています。
レイアウトの工夫
車椅子で働くメンバーのために、車椅子で通れる導線を意識してオフィス内のレイアウトを組んでいます。また整理整頓に力を入れています。
急な休みへの対応
職場の仲間をまとめるリーダー役を配備し、メンタルの不調や体調不良で欠勤者が出た場合でも業務状況を共有し、皆が安心して働ける体制を整えています。また、そのリーダーが欠勤した場合でも業務に支障がないよう、役割を複数のメンバーで分担して対応できる体制にしています。
メンバー同士のサポート
初めての業務の場合、基本的には担当社員に業務を教わります。何度か繰り返してその業務ができるようになったら他のメンバーと一緒に業務を進めます。最終的にはメンバー同士でコミュニケーションを取り、助け合って業務を完結できるようにしています。
社内でバリアフリー化していない場所もある為、車椅子のメンバーが段差のある場所に行く際には他のメンバーが危険の無いよう同行しています。一人で行う事は出来るだけ一人で行い、お手伝いが必要な場合にはすぐ対応出来るようにしています。
人材育成
社会人として
働くことが初めての方には報連相の重要性や、わからないことをそのままにしない、声をかけられたら返事をする、などの社会人として基本的な心構えやルールから指導しています。
また、業務の不明点は質問や相談をするようにして、その際は答えを聞くだけではなく、しっかりメモを取るように伝えています。個人差はありますが、これを継続することで業務の終了報告や、曖昧な状態なままで業務を進行しない仕組みづくり、個々の時間管理能力の育成を目指しています。
自分の考えを他者に伝える
毎週行うミーティングの中で2〜3分のスピーチ練習をし、コミュニケーション能力を鍛える時間を設けています。発表内容例としては一週間の中で起こったニュースとそれを選んだ理由や感想などです。発表者は自分自身で発表内容を決め、情報を整理して発表することで考えや思いを他人に伝える経験を積むことができます。
業務の幅を広げる
まずはひとつの業務をしっかりできることを目標にします。その業務が身につき、ある程度判断ができるようになったら自分自身で課題や改善点を見つけるステップに移ります。そしてその課題の改善にむけて取り組み、最終的には業務の幅を自ら広げていけるようになることを期待しています。またこうした成長を後押し、支援できる体制を整えています。
専門部署で行っている業務
当社の専門部署では書類の仕分けやデータ作成、リスト整理等さまざまな業務を行っています。基本的には担当社員より業務ごとに手順、使用する道具や場所、期日などを説明します。また実際に業務に取り組む前後には、不明点に関する質問を受けて回答し、不安なく業務に取り組めるよう配慮しています。
初めて触れる機器やパソコンソフトについては、取り扱い方をはじめから丁寧に教えています。他部署から依頼されるイレギュラーな業務は担当社員が窓口となり業務の手順や進め方を整理した後、わかりやすくメンバーに伝えています。
現在までの主な業務内容例は以下です。
- 書類や各種データの集計、チェック、ファイリングなど
- 備品や送付物について、宛名ラベル作成、封入、発送
- 保管書類の仕分け、PDF化、管理画面への入力など
- その他、各部署から依頼されるさまざまな業務



担当社員からのメッセージ
一緒に働くメンバーに求めること
一緒に働くメンバーに求めることは、素直さとまじめさです。苦手な部分や弱みがあっても構いません。それを自分自身で認められることが大切だと考えています。得意不得意はそれぞれ違うので、メンバー同士でフォローし合う考えを持てると良いです。
入社時によく聞かれること
入社したてのメンバーからよく聞かれるのは、わからないことは誰に聞けば良いですか?と言う質問です。業務に関することは、その業務を依頼した者に聞くようにしてもらい、それ以外のことは担当社員に聞いてもらうように伝えています。
また、パソコンを使う入力業務と手や体を動かす作業的な業務の割合を聞かれます。パソコンを使う業務は7割、作業的な業務は3割ぐらいです。全員がどちらの仕事も担当してもらうようにしています。もちろん、本人にとって難しい業務に関してはしっかりサポートするように心がけています。
また勤務時間についての質問も多く寄せられます。入社により生活環境が変わることが苦手な方もいらっしゃるので、本人やお医者様の意見を伺いながら、環境に慣れるように勤務時間を調整しています。はじめは勤務時間を短めにし、慣れてきたら少しずつ規定の勤務時間まで延ばしていきます。
長く勤めることで
とあるメンバーの方についてのお話です。入社当初は担当社員が目を離すと自分がやりたいように業務をすすめてしまう方でした。元々の作業手順を変えて行ってしまい、正しい完成形に至らないことや、気の進まない業務に対して以前の倍以上の時間をかけることなどもありました。
この事態を解決すべく、話をする担当を同性だけにする、本人のご両親に相談する、支援サービスの方に来て頂くなど、さまざまなことに取り組みました。しかし、いずれもすぐに改善につながることはありませんでした。
ところが5年ほど経った頃から、そのメンバーはとても落ち着き、円滑に業務に取り組んでいます。他のメンバーの苦手な事柄を先回りしてサポートする等の気づかいもできています。もちろん今でもたまには間違ったことをしてしまうことはありますが、確実に変化しています。会社に勤め始めてさまざまな経験をし、多様なメンバーと関わり、少しずつ時間をかけて身につけたことが、現在の変化につながっているのではないかと感じています。決定的なきっかけがあったわけではないようなので日々の小さな経験の積み重ねかもしれません。
一緒に働いているメンバーを見ていて「ああなりたい」と本人が思って頑張ったのかもしれません。長く勤めることで得られるものは間違いなくある、と感じました。
今後もやりがいを持って長く働ける職場を目指して行きたいと思っています。